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by tanemaki_azumino

6月10日 同一価値労働同一賃金

6月10日 同一価値労働同一賃金

これはと思ったので、わたしも買いました。
【コンメンタール】パートタイム労働法
厚生労働省雇用均等・児童家庭局 短時間・在宅労働課長の高﨑真一氏の著書
です。

厚労省には「短時間・在宅労働課」なんていう課があるのですね。
お役人の書いた本なので参考書程度にと思っていたのですが、
巻頭言を読んで、心動かされるものがありました。
いわゆる「お役人仕事」ではない熱意を感じたのです。

以下、その巻頭言を引用します。

「同一労働同一賃金の原則」というものがあります。「労働用語辞典」によれば、「同一の価値(等質、等量)をもった労働に対しては同一の賃金を支払わなければならないということ」とあります。

 一見、当たり前のことを言っているようで、現に、経営側もある意味で同意しています。日本経団連の「二〇〇八年版経営労働政策委員会報告」には、「日本経団連は、同一価値労働。同一賃金の考え方に異を唱える立場にはないことを明確にしておきたい。同一価値労働とは、将来にわたる期待の要素も考慮して、企業に同一の付加価値をもたらす労働である。このような労働は、同一処遇で報いられるべきである」とあります。

 ところが、問題はそれほど簡単ではありません。どのようにして「同一価値労働」かを判定するかが具体的に決められていなかったからです。その結果、お互い『抽象的』に、労働者は「同じ仕事をしているのだから、同じ賃金が支払われるべきだ」と主張するのに対して、経営者は「同じ仕事に見えても将来にわたる期待が違うので、同一価値労働ではない」と反論するわけです。このような議論が繰り返されてきました。

 今回、改正パート労働法は、「同じ職務(業務+責任)、同じ人材活用の仕組み・運用、実質的契約形態が同じ」=「同一(価値)労働」であり、その場合は、全ての待遇について差別してはならない(当然同一賃金)ことを法定しました。いわば現時点における日本版「同一労働同一賃金の原則」を、我が国の法制上は初めて『具体的』に実定化したものです。この規定そのものは正社員とパート労働者間のルールですが、男性正社員と女性パート労働者にさえ適用されるルールが、例えば男女の正社員間に準用されない訳はなく、一般法理としての意味も合わせ持つと考えます。

 その意味では、改正パート労働法の施行を契機として、我が国においてもいよいよ、「同一労働同一賃金の原則」が理念として語られるだけではなく、実際に労働の現場で適用される時代に入ることになります。もちろん課題はあります。正社員し含めて全ての労働者について、その職務や人材活用の仕組みをあらかじめ明確に定めておく慣行が、我が国の労働の現場において広く定着していかなければ、折角の原則も十分には生かされません。そして、その慣行の定着こそが、改正パート労働法全体の理念である、「働き・貢献に応じた待遇=公正な待遇」の実現につながる道と考えます。

 本書は、パート労働法の改正の経緯を明らかにするとともに、各条文の趣旨、内容を可能な限りわかりやすく説明したものです。本書が労使をはじめ関係者に広く利用され、本法についての理解が促進され、我が国における「同一労働同一賃金の原則」の確立、ひいては「働き・貢献に応じた待遇=公正な待遇」の実現の一助となれば、幸甚です。

平成二十年三月
  厚生労働省雇用均等・児童家庭局 短時間・在宅労働課長 高﨑真一

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※パート労働法そのものは地方公務員を適用除外としていますが、自治体でも法の趣旨がふまえられなければならないことは総務省も認めています。
by tanemaki_azumino | 2010-06-10 23:25 | 議会と地方自治